政治

「一強多弱」を憂える前に、世論を反映しない選挙制度こそ変えるべし

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日本に二大政党制は根付かない

小選挙区比例代表並立制導入後初の第41回総選挙(1996年10月20日)の開票風景。投票率はその時点で戦後最低の59%だった(毎日新聞社)

小選挙区比例代表並立制導入後初の第41回総選挙(1996年10月20日)の開票風景。投票率はその時点で戦後最低の59%だった(毎日新聞社)

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 総選挙が終わった。自民党と公明党の与党の獲得議席数は全体の3分の2を超えた。

 するとさっそく、巨大与党に対抗するために野党は結集すべきだ、という妄想を語る者が出てきた。もういいかげん、「二大政党による政権交代」などという、まったく日本に合わない政党政治の追求は止めたらよいのではないか。

 豪腕を使った野合によって「徒党」を組んではみたものの、結局は分裂して、なおのこと小政党が増えた。そういう例を、わたしたちはこれまで何度も見てきた。そろそろ違う道を模索したらよい。

 筆者は「一強多弱」を容認したいわけではない。「多弱」をまとめるよりも、「一強」がさほど強くないという現実をありのままに認識して、それに素直に反映する選挙制度に変えたらよいと思っているのである。1996年から採用されている小選挙区比例代表並立制(*1=編集部注)のねらいは、日本政治に「二大政党による政権交代」をもたらすことにあった。そのために、大政党に有利な小選挙区制をメインに据え、第3党以下に配慮する必要から、これに比例代表制(*2)の部分を付け加えたのである。それが証拠に、早くも2000年には比例代表の定数は200から180に減らされてしまった。

 こうした政治的作為にもかかわらず、日本に二大政党制は根付かなかった。この選挙制度が採用されてからの18年間、議席を獲得する政党の数が7を下回ったことはない。最高は10である。二大政党制を目指しても、このザマなのだ。

自民党=一強が「みせかけ」であるわけ

 小選挙区比例代表並立制の下、これまで7回の総選挙が行われてきた。そのうち、小選挙区選挙における第一党の最高得票率は約48%(2014年、自民党)、比例代表では約42%(2009年、民主党)である。いずれも50%を超えていない。ようするに、「一強」は見せかけなのである。

「一強」を生み出しているのは、大政党に過大に議席を配分してしまう小選挙区制である。2014年の総選挙について、比例代表の得票率だけをベースに全議席を各党にざっくり振り分けてみよう。この単純推計では、自民の議席数は157となり、公明の65を加えても過半数にはならない。一方、民主は87、維新は75、共産は54になる。

比例代表制なら投票率も上がる

 筆者は、中規模の政党が5つ程度あって、必要に応じて連立政権を組み変えることで、世論を的確に政治に反映させることが望ましいと思っている。比例代表制を選挙制度の中心に据えれば、すぐに実現できることだと思っている。

 比例代表制ならば、いわゆる一票の格差(*3)も解消しやすくなる。小選挙区選挙でしばしば見られる「結果がわかる勝負」(*4)もなくなるのだから、投票率も上がるにちがいない。二大政党制における「A党が嫌だからB党にする」といった消極的投票や、「AかBか」に由来する劇的な議席変動もなくなる。「分厚い中間政党」があれば、現状に対する不満票の行く先も多様化する。

 選挙結果を左右するのは、政党の政策であり、政治家個人の力量である。そう思われがちだが、じつは最も大きな影響を与えるのは、選挙制度である。

 しばらく「野党再編」などという空疎な言葉は封印して、選挙制度改革について考えてみようではないか。

【編集部注】

*1 小選挙区比例代表並立制

1994年にこれまでの「中選挙区制」に代わる選挙制度としてできた。比例代表と小選挙区の二票制からなり、比例代表は全国単位の拘束名簿式で、小選挙区との重複立候補を認め、同一順位の当落は小選挙区の惜敗率で決まる。

*2 比例代表制の特性

比例代表制は、各政党の票の獲得比率によって議席が配分され、得票率と議席率の乖離が少なく、このため「死に票」が少ない。小選挙区制が政党本位、中選挙区制が人物本位なのに対し、幅広い民意を反映しやすいのが特徴とされる。世界の主要国では、ドイツ下院が小選挙区と比例代表の併用制を採用、イタリア、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、ベルギー、オランダ、オーストリア、ルクセンブルクが、有権者は候補者個人名、政党名のどちらでも投票でき、当選者は個人の得票数の順で決まる非拘束名簿式の比例代表制、スペインが有権者は政党名を投票し、当選者は政党が決めた順位で決まる絶対拘束名簿式比例代表制をそれぞれ採用している(国会図書館政治議会課調べ)。

*3 一票の格差

議員1人当たりが代表する有権者数の格差。一票の重みの不平等のこと。総務省は、2014年12月2日、第47回総選挙の公示日に合わせて、全国の選挙人名簿登録者数(有権者数)について発表した。これによると全国295小選挙区の「一票の格差」は最大で2.14倍に達した(有権者数の最多は東京第1区49万5724人、最小は宮城5区23万1668人)。最高裁が違憲状態と判断した格差2倍以上の選挙区は13選挙区に及んだ。

*4 結果がわかる勝負

今回の総選挙で、全国の小選挙区295のうち民主党が立てた立候補者は178人。これに対して自民党は352人。有力野党の候補者不在の選挙区が目立ち、自民党の勝利は容易に想像できた。選挙公示日の直後から大手各紙は「自民党300議席超え」と予測する記事を掲載し、有権者は「投票しても与党が勝つのでムダになる」という気分になった。これが投票率低下の原因となり、固定組織票の多い自民党や公明党の圧勝につながった。